遺贈と相続の違いとは?特定遺贈に包括遺贈・・わかりやすく解説します!

みなさんは遺贈という言葉をご存知でしょうか?

遺贈は「遺言による贈与」のことを言うのですが、相続と同じように、死亡と同時に効力を生じます。

また、よく同時に検討される手続きとして生前贈与や死因贈与などの手続きもあります。

今回はそれぞれの違いについて解説していきながら、その特徴や注意点についてお話ししていきたいと思います。

目次

遺贈(いぞう)とは

遺贈とは、遺言によって相続人や相続人以外の人に財産を引き継がせることです。

相続とは異なり、相続人以外に財産を渡すことが可能で、全くの他人であったり、NPO団体や病院、教育機関等に寄付をすることが可能となります。

身寄りのない方や相続人とは疎遠で、普段お世話をしてくれる人に財産を渡したいと考える方にとっては、非常に有意義な制度であると言えます。

ただし、遺贈を行うためには、必ず遺言書を作成しておく必要がありますので、注意してください。

遺贈と相続の違い

「相続」は、民法の規定に従って法定相続人に財産を引き継ぎます。

従って、財産を受け取る人は必ず「相続人」と言うことになります。

その点、遺贈の場合は、法定相続人以外に財産を渡すことができ、受遺者(もらう人)に何らの制限はありません。(誰にでも渡すことが可能です。)

遺贈と生前贈与の違い

「生前贈与」は、生前に財産を譲渡する契約なので、遺贈とは異なり、死亡時に効力が発生するものではありません。(生前に財産が移転します。)

また、「契約」であるため、手続に受贈者の協力も必要となります。(必ずしも書面による必要はなく、口頭でも可)

一方、遺贈の場合は、遺言書によって財産を譲渡するだけですので、遺言書は必要ですが、契約は必要なく、受遺者の協力は必要ありません。

遺贈と死因贈与の違い

死因贈与とは、贈与者の死亡を条件として財産を譲渡する契約です。

契約なので、受贈者の協力も必要となります。(必ずしも書面による必要はなく、口頭でも可)

イメージとしては、「私が死んだらこの財産をあげるから、今のうちに契約しておこうね」と言うものです。

遺贈、相続、生前贈与、死因贈与の違いまとめ

上記の内容を簡単にまとめておきます。

遺贈相続生前贈与死因贈与
誰が遺贈者被相続人贈与者贈与者
誰に誰でも法定相続人誰でも誰でも
効力発生時期死亡時死亡時生前死亡時
どうやって遺言書特になし契約(口頭でも可)契約(口頭でも可)
もらう側の協力不要不要

包括遺贈と特定遺贈の違い

遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。

それぞれの違いについて確認していきます。

包括遺贈(ほうかついぞう)とは

包括遺贈とは、遺産の内容を指定せずに、財産の全部又は一部を譲り渡す遺贈のことです。

例えば、「全財産をAに遺贈する」「遺産のうちの2分の1をAに遺贈する」「遺産のうちの30%をAに遺贈する」などが包括遺贈と言うことになります。

注意点として、包括遺贈の場合には、マイナスの財産も受け継ぐことになりますし、財産が具体的に特定されていないので、どの財産をどれだけ受け継ぐのか相続人たちと話合う必要が出てきます。

包括遺贈の場合で、財産を放棄する場合

包括遺贈の場合、相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所で「包括遺贈の放棄の申述」をしなければなりません。

これは法定相続人が相続放棄を行う時と同様です。

特定遺贈とは

特定遺贈とは、財産を特定して行う遺贈です。

例えば、「甲不動産をAに遺贈する」「乙株式をAに遺贈する」などが特定遺贈に当たります。

特定遺贈の場合には、既に引き継ぐ財産が特定されているので、負債を受け継ぐ必要はありませんし、相続人との話し合いも必要ありません。(どの財産を引き継ぐかわかっているので)

特定遺贈の場合で、財産を放棄する場合

特定遺贈の場合、放棄に期限はありません。

また、家庭裁判所に放棄の申述を行う必要もありません。

単純に法定相続人に「遺贈については放棄します」と伝えればオッケーです。

ちなみに、特定遺贈を受けるのか放棄するのか、ずっと態度を保留されてしまうケースもあります。

そうすると、相続人や遺言執行者などの利害関係者は遺産の分割ができないことになり、非常に迷惑します。

そのため、遺贈義務者や利害関係者は、期間を定めてその期間内に遺贈を承認するか放棄するかを決めるように受遺者に催告することができるようになっています。

受遺者が決められた期間内に回答をしなかった場合には、承認したものとみなされます。

遺贈に係る税金について

相続税

遺贈の場合には、「相続税」が課税されることになるので注意しましょう。

遺言による贈与=遺贈なので贈与税が掛かると思われるかもしれませんが、遺贈の効力は遺言者の死後に生じることから相続に似た性質といえ、相続税が課税されます。

相続人が受遺者になる場合は通常の相続税の計算と同じで問題ありませんが、相続人以外の人が受遺者になる場合は、2割加算といって相続税の納付額が2割増加することになります。

なお、死因贈与についても同様の考え方から相続税が課税されるので、併せて覚えておくと良いでしょう。

また、相続税には基礎控除があります。

遺産総額のうち「3,000万円+法定相続人数×600万円」分に関しては相続税がかからないというものです。

そのため、実際に支払わなければいけない税額は、この控除額を差し引いた額を法定相続分で計算した相続税の総額を、財産を受け取った割合に応じて負担する形になります。

なお、法人に遺贈した財産は、原則として相続税計算の対象外となります。

不動産取得税

「包括遺贈」の場合には、一定割合に相当するプラスの財産だけでなく、負債についても同様に引き継ぐこととなるため、相続人と同等の地位を有するものとして不動産取得税は非課税となります。

しかし「特定遺贈」の場合、負債を承継せずにプラスの財産を遺贈することも可能です。

そのため、財産を承継する人物が法定相続人であれば、不動産取得税は非課税となりますが、法定相続人以外が承継する場合には不動産取得税の課税対象となります。

遺贈と登記について

遺贈により財産を取得したら所有権移転登記が必要になります。

遺言執行者が遺言に指定されているか否かによって、登記手続きを行う人と書類が変わってきます。

遺言執行者あり=遺言執行者と受遺者の共同申請

遺言執行者なし=遺言者の相続人と受遺者の共同申請

遺言執行者が指定されていない場合、登記は難しくなるかも

これは私が実際に体験した案件です。

遺言者が遺言を残していたので、遺贈の登記をすることになったのですが、その受遺者は法定相続人である妻と子供ではなく、生前自分のお世話をしてくれた実の妹でした。

遺言者は、妻と子供がいたのですが、長い間連絡を取っておらず、また、連絡も取れないような状況でした。

そして、その遺言書を持ってその妹さんが弊所へお越しになり、手続きを行おうとしたのですが、遺言執行者の記載がなかったのです。

遺言執行者の記載がない場合には、手続きを行う人は「遺言者の相続人(妻と子供)と受遺者(妹)」です。

このようなケースで、妻と子供に協力してもらって登記手続きを進めることは非常に困難です。

よって、この時には遺言執行者選任の申し立てをして、登記手続きを行いました。

ただ、時間も労力もお金も余計にかかってしまったので、せっかく遺言書を残すのであれば遺言執行者も併せて指定しておくとより万全だなぁと感じた案件でした。

遺贈に係る登録免許税の違い

遺贈の場合、登録免許税の税率が異なりますので、注意が必要です。

受遺者が相続人=1,000分の4

受遺者が法定相続人以外=1,000分の20

受遺者が相続人である場合には、相続登記と同じ税率になるのですが、受遺者が相続人以外の場合には、贈与登記と同じ税率となってしまいます。(その差は5倍)

仮に1,000万円の固定資産評価額の不動産を遺贈した場合の登録免許税で比較してみると、

受遺者が相続人=4万円

受遺者が法定相続人以外=20万円

ですので、かなり金額に開きが出ます。

手続きを進めていったら思ったよりもお金がかかってしまったと言うことがないように、事前に確認をして心構えをしておく必要があるでしょう。

まとめ

遺贈という言葉はあまり聞きなれない言葉であったと思いますが、これでおおよその内容は掴めたのではないかと思います。

これは個人的な見解なのですが、遺贈において最も重要なタイミングは、「遺言書を作成するとき」です。

遺言書は自筆証書遺言でいいのか?公正証書にしなくて大丈夫か?

自筆証書遺言の場合には、検認手続きが必要になってしまうし・・

法定相続人以外に遺贈する場合には、家族間での揉め事は起きないか。

遺言執行者は選任しておくべきか。

遺留分侵害額請求について検討しておくべきか・・等々

今挙げた内容は、全て遺言書を作成する時に検討すべき事項です。

この辺を適当にして遺言書を作成してしまうと、受遺者が思わぬしっぺ返しを食らうこともあります。

ですので、遺贈を行う遺言書を作成する際には、あらゆる側面からきちんと検討して円満な終活行ってください。

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