相続人申告登記〜相続登記ができない・・困った時の対処法〜

さて、相続登記が令和6年4月1日から義務化されましたね。

肌感覚として、相続登記や相続にまつわるご相談が増えてきたな〜と感じている今日この頃です。

ご相談の中には「30年近く放置している」「曽祖父の名義から変更してない」「相続人の仲が悪くて遺産分割協議がまとまりそうにない」といった難しい要素を孕むご相談もあります。

相続登記が義務化される前までは、「相続登記は義務ではないので、売却等の処分を行わないのであれば放置するのも手ですよ」と言った案内も散見されたのですが、今回の義務化によってその代償を払わされている感も否めないですね(笑)

法律の改正は当然に行われることではあるのですが、「先祖代々放置してきた」という方にとっては堪ったもんではないですね・・

愚痴は置いておいて、今回は相続登記の義務化と共に新設された「相続人申告登記」について解説させていただこうと思います。

制度が始まって何件か申請したので、少し専門的な部分も含めて解説していきたいと思います。

では、スタートです。

目次

相続登記と相続人申告登記の違い

まずは相続登記と相続人申告登記の違いを簡単に押さえておきます。

相続登記とは、遺産分割協議等を経ることによって、不動産の名義を変更することを指します。従って、きちんと名義変更が完了するので、手続きを終えてしまえばなんら心配はありませんし、その後に売却手続き等の処分行為も行うことができます。

相続人申告登記とは、何らかの理由で相続登記ができない場合に行う登記です。相続登記ができない理由として多いのは、「相続人の協議がまとまらない」「相続人が非常に多く、遺産分割協議が困難である」「相続人が行方不明」などです。

つまり、相続登記をした=心配なし

相続人申告登記をした=まだ課題は残ったまま

ということになります。

相続人申告登記はなぜやるのか?

相続人の遺産分割協議がまとまらず、相続登記ができないのであれば、放っておけばいいのでは?と思う方もいると思うのですが、ここで問題になるのが「相続登記の義務化」です。

法務局からの文章を一部抜粋します。

(1)
相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

(2)
遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

(1)と(2)のいずれについても、正当な理由(相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケースなど。)なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。
なお、令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も、3年の猶予期間がありますが、義務化の対象となります。

すごく簡単に表現すると「相続が発生したら3年以内に相続登記をしてね。きちんとやらないと10万円以下の罰則があるよ」ということです。

ただ、実際の相談では一括りにはできない様々な問題があります。

数十年連絡を取っていない兄弟に連絡をすることがネックになっていたり、会ったこともない親族の協力が必要になったり、依頼者一人一人に色々な事情があります。

国の意向で「義務になりました。だからさっさと手続きしてね」と言われても、それはちょっと厳しいよ・・というケースも多々あります。

(所有者不明土地の解消であったり、活用されていない土地の再活用等々、色々な狙いがあるのもわかりますが、現場はまぁまぁ大混乱ですよ(笑))

さて、文句を言っていても仕方ないので・・

弊所へご相談に来ていただく方で割と多いのが「相続登記の義務化の話を聞いた。正直、きちんと相続登記をやるのは厳しい(相続人間で協力して手続きをするのが無理)。でも罰則は怖い。何とかならないですか?」というご相談です。

その際に利用する手続きが「相続人申告登記」です。

相続人申告登記をするとどうなるのか?

相続人申告登記を行うと、「相続登記義務」を履行したものとして10万円以下の過料がかからなくなります。

ただし、以下の点に注意が必要です。

・相続人申告登記は、相続登記義務を免れるだけなので、最終的にはきちんと相続登記を行わなければならない(※)

・ 不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要がある

※少々脱線しますが、相続人申告登記を行い、その申告登記を申請した相続人が死亡した後に相続放棄をすれば当該不動産に関する相続登記義務からは身を引くことができます。例えば、父方の実家の相続の件で10年以上揉めており、孫の代にはこの問題を引き継ぎたくないが・・と言った状況の時には利用する価値があります。(非常に分かりづらい話なので、お困りの方は弊所までお問い合わせください。)

相続人申告登記は「とりあえずの登記」と考えておいてください。

「とりあえず」なので後日きちんと対応(相続登記)をしなければなりません。

相続人申告登記を利用する依頼者側の理由 意外だったこと

相続登記をしなければならないことはわかったけれども、これは絶対かと言われるとそうでもありません。

相続登記をしないことについて「正当な理由」があれば過料が課されることはないとされています。

法務局から正当な理由の例として挙げられているのは以下のような場合です。

1 相続登記の義務に係る相続について、相続人が極めて多数に上り、かつ戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合

2 相続登記の義務に係る相続について、遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合

3 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合

4 相続登記の義務を負う者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成13年法律第31号)第1条第2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及び恐れがある状態にあって避難を余儀なくされている場合

5 相続登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

ただし、上記に当てはまらない場合であっても個別の事案における具体的な事情に応じ、登記をしないことについて理由があり、その理由に正当性が認められる場合には「正当な理由がある」と認められます。

ただ、実際の事例で一番多いのは「仲が悪いから話がまとまらない」ということに尽きると思います。

実際、弊所にご相談をいただく際に、スムーズに手続きを進められそうなもない場合の理由は「仲が悪い」というものが一番多いです。

「仲が悪い」ということだけでは、「正当な理由がある」とは言い難いです。

しかし、法務局が挙げているような理由がある方でも、相続人申告登記を利用される方は割といらっしゃいます。

これは私も意外だったのですが、「法務局から連絡が来るのが怖い」「ずっと相続登記を放置して、大丈夫だと分かっていても、頭の片隅に相続登記をやっていないという状況で居続けるのが嫌だ」という方が結構いらっしゃいます。

よって、弊所ではよく聞き取りを行った上で、予防策として相続人申告登記を行うことがあります。

これは実際に相続人申告登記が施行されて、実際の相談からわかったことですが、よくわからないことについて放置してしまうというのは心理的にあまり良いものではないようです。

なので最近は「安心材料として相続人申告登記をしておくのも手ですよ」と案内をするようにしています。

相続人申告登記は他の人の分も申請できるか?

これは私が実際に申請してわかったことです。

多少専門的にはなりますが、書き残しておきます。

相続人申告登記の制度がスタートする前に、ちょうど相続人申告登記を申請したいという依頼がありました。

新制度が始まる時は司法書士も法務局も手探りなので、明確なこと以外は法務局と相談しつつ進めていくのですが、その時に迷ったのは以下のようなことでした。

父が死亡した。
母は認知症であり、事理弁識能力がない。
子供は長男と長女の2名である。
母については、後日成年後見人を立てるかもしれないが、現時点では未定である。
相続登記の義務化に伴い、相続人全員について相続人申告登記をしたいが可能か?

ポイントは「相続人全員について」というところです。

通常の相続登記をする際、法定相続分で登記をする場合には保存行為として相続人一人からの申請で相続人全員分の登記が可能です。

これに準じて相続人申告登記も相続人全員分できるのか?というのが疑問でした。

結論としては、「相続人申告登記は個別に申請するものであるので、他の相続人の分も含めて相続人申告登記をすることはできない」のですが、「いけるだろう」と考えていたのでちょっと意外でした。

相続人申告登記を保存行為と考えても良いのでは?とも思いますが、法務局の結論は保存行為と同一ではないということでした。

同じようなことで悩まれている方がいらっしゃれば参考にしてもらえると嬉しいです。

まとめ

ここまで昨年から始まった新制度である相続人申告登記についてまとめてみました。

どのような制度であっても、要は使いようなので、「相続人がまとまらない!どうしよう・・」と焦ることなくお近くの司法書士に相談してみてください。

弊所でも色々なご相談をお受けしております。お困りの際はいつでもご連絡ください。

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