認知症でも遺言書は作成できますか?

認知症は人ごとではありません。65歳以上の高齢者の6人に1人が認知症と言われています。

ご自身も含めてご家族が認知症になることはいつ起きてもおかしくありません。

65歳以上の認知症の方は2020年で約600万人、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)になると推測されています。〈厚生労働省ホームページより〉

また、認知症の症状が出始めたタイミングというのは、色々なことを考えるタイミングでもあります。

・このまま一人で暮らしていけるだろうか・・

・施設に入りたいけど、入居費用はどのくらいかかるのだろうか・・

・自分の財産を子供たちに管理して欲しいけど、どうしたらいいだろうか・・

・自分が死んだら、子供たちは仲良く相続してくれるだろうか・・

人間、今まで当たり前にできていたことが出来なくなってくると、この先のことについて考え始めるものです。

そこで今回は、認知症の症状が出てしまったが、遺言書は残せるのだろうか?という点についてお話ししていきたいと思います。

まずは結論

認知症と診断された人でも遺言書は作成できます。

ただし、有効な遺言書を作成するには十分な注意が必要です。

→ 認知症がひどい場合には「意思能力が無い人」が遺言書を作成したとして遺言書が無効となる可能性があります。

無効の場合はその遺言は法律上は「無かったもの」として扱われます。

そもそも遺言書の作成ができる人とは

遺言制度は、自分の死後、遺産分割の争いが起きないように、生前から相続の方法を具体的に決めておけるようにした仕組みです。

亡くなった人(被相続人)の意思を書面にあらわしたのが「遺言書」です。

遺言書が無効とならないために、作成要件に注意しましょう。

民法には次のような規定が定められています。

a 遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。 (民法963条)

b 15歳に達した者は、遺言をすることができる。(民法961条)

 

① 遺言能力とは、自分が残した遺言の内容を理解し、自分の死後に遺言によってどのような結果がもたされるかを弁識(はっきり理解する)することができる意思能力のことをいいます。 
→ この遺言能力が無いと遺言は無効となります。

② 満15歳以上で遺言能力があれば未成年でも親の同意なしに遺言はできます。
→ 遺言はたとえ親でも代理することはできません。(遺言代理禁止の原則)
→ 遺言はその人の最終意思のため、これは最大限尊重されますので未成年でも満15歳以上は遺言能力を認めています。
・ただし精神疾患等により意思能力がない場合には、遺言能力は無しとされています。

認知症の症状が出てしまっている場合に、「遺言能力があるかなんてなんとも言えない・・」ということは多々あります。そこで、

裁判において遺言能力を判断するために、どのような点が加味されたか見てみましょう。

遺言能力の有無が争われた場合は、遺言の内容や作成の経緯・動機や病状などをもとに裁判所が個別具体的に判断することになります。

(平成26年の東京地裁判例)
遺言者の状況を総合的にみて、遺言の時点で遺言事項(遺言の内容)を判断する能力があったか否かによって、遺言能力の有無を判断すべきである。

遺言の内容

遺言者の年齢・病状を含む心身の状況及び健康状態とその推移

発病時と遺言時との時間的関係、遺言時と死亡時との時間的間隔

遺言時とその前後の言動及び精神状態

日頃の遺言についての意向

遺言者と受遺者の関係

前の遺言の有無、前の遺言を変更する動機・事情の有無等

実際の裁判でも、「ここからここまでは遺言能力あり!」「ここからここまでは遺言能力なし!」と決められる訳ではなく、様々な状況を踏まえて判断しているということですね。

認知症の人に遺言能力があると言えるのか

上記裁判例からも分かるように、認知症だから一概に遺言能力が無いとはいえません。

認知症の方は判断能力が衰えてきますが、人によって症状、判断能力低下の程度が異なります。

よって、非常に判断が難しいのです。

以下では、認知症と診断されてしまった後に、具体的にどのように遺言書を残すのか解説します。

 

認知症と診断され、「後見開始」決定がなされている場合

◎ 遺言者が「成年被後見人(被後見人=認知症などで後見される人)」の場合は以下の条件で遺言書の作成が認められます。
(民法973条)

・事理を弁識する能力を一時回復した時に、
・医師2人以上の立会のもとで遺言し、
・立ち会った医師が、遺言者が遺言をする時に精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して署名捺印する。

万全の状態で、専門家立会のもと、遺言書を残すパターンです。

認知症(の疑いあり)と診断されたが、後見人は付いていない場合

認知症が軽度や中度で、自分が残す遺言の内容を理解し、自分の死後に遺言によってどういう結果がもたされるかをはっきり理解することができる場合は、事理弁識能力がある=遺言能力があるとして遺言書を作成することができます。

ただし、 この場合遺言者が亡くなった後に、相続人同士で争いが起こり、認知症だったから遺言書は無効だと主張され訴訟となることも予想されます。

したがって、以下のポイントを参考にしながら万全な遺言書作りを進めていくことが肝要となります。

有効な遺言書を作成するためのポイント

1 公正証書遺言書を作成する

自筆証書遺言は法的要件の不足などで無効となる可能性があります。少しでも判断能力に不安があるならば、公証人が内容を判断、作成し証人の立会もある公正証書遺言がおすすめです。

2 医師の診断を受けて、診断書を作成してもらう

認知症の症状について診断書を作成してもらってください。

診断書によって判断能力の程度を客観的に証明することができます。ただし診断書は遺言能力の証明では無いことに留意ください。

3 簡単な内容で遺言者が理解・認識できる内容にする

公正証書遺言をする場合、公証人に遺言内容を伝え公証人に遺言書を作成してもらいますが、複雑な内容の場合、遺言者が理解できず内容が伝わらない可能性があります。「全財産を長女に譲る」など簡単な内容であれば遺言者が認識できる可能性が高くなります。

親が認知症になる前の対策として「家族信託」

親が認知症になっても子供が預金をおろしたり、不動産を売買するなどの財産処分をしたい場合には「家族信託」も有効な制度です。

① 親が元気なうちに、親と子が「信託契約」を結び、子に財産の管理と処分を委任します。親の認知症が進むと「財産が凍結」される可能性があるため未然に防ぐのが「家族信託」です。
→ 認知症になってから(事後)財産凍結を解消するのは「成年後見制度」です。

② 家族信託は、財産の所有権を「財産から利益を受ける権利」と「財産を管理運用処分できる権利」に分けて子に管理運用処分権限を渡すことができる契約です。
→ 所有者である親の認知症などの影響を受けずに、子が信託された財産の管理運用処分ができます。
→ 財産は親の財産のままで賃貸マンションの家賃などの収益も親のものです。

③ 契約書の中で、次に財産権(財産から利益を受ける権利)を誰に継がせるか決めておくことができます。
→ 法律上は継承の契約が有効となり、遺言を残すことと同じとなります。

まとめ

1 認知症(の疑い)と診断されても遺言書の作成はできます。ただし、無効とならないようにきちんと手順を踏む必要がある。

2 遺言書は遺言能力が無いと無効になる可能性があります。
有効な遺言書を作成するには「公正証書遺言」「医師の診断書」「簡単な内容にして遺言者が理解できる内容」が不可欠。

3 認知症となった場合は、認知症の人を保護・支援し、法律行為を有効にするために「成年後見制度」の利用を検討しましょう。

4  将来、認知症になることが不安な人は親が(自分が)元気な内に対策をしましょう。
① 公正証書遺言を作成する。
② 任意後見制度を利用する。
③ 家族信託を活用して財産管理の方法を決めておく。

5 それぞれの仕組みの「メリット・デメリット」をよく理解して最適な対策を選択しましょう。

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